映画「八つ墓村」

永禄九年 一五六六年

武士の集団が川の浅瀬を登っている

川の水を飲み朽ち果てる者や
滝の横から落下する者など多くが命を落としたが

頂から遠くに見える村を
数人の者が、見つけた。

〈現在〉

飛行機が滑走路に着陸した。

まだ若干動いている飛行機を
停止させるように職員は誘導した。

飛行場職員の男性はその上司に呼び出され
新聞を渡された、そして一つの記事を見るように言われる。

「それ、君の事だろ?」
上司は職員の男性に言った。

《 尋ね人 》

昭和22年3月16日生れ(長男)

寺田辰弥

父  寺田辰造
母    鶴子

本人、若しくは心当たりの方は、
至急連絡を乞う。

連絡先

大阪市東区北浜三丁目九七-一

ビジネスビル四階 諏訪法律事務所

諏訪 啓

電話(〇六)二〇二-三一九一

新聞のにはこうあった。

「だったらどういう事なのか
そこに連絡してみるとどうだね」

そう言い飛行場職員の男性(寺田)
の肩を軽くたたき、上司は仕事に戻って行った。

その後、寺田は諏訪法律事務所に行く為
大阪を訪れ、割とすぐに諏訪法律事務所を探し当てた。

〈諏訪法律事務所〉

事務所の中は薄暗く、諏訪(弁護士)の他、
袴を着た老人男性が1人ソファーに座っていた

「じゃあ質問させていただきます
お父さんは寺田辰夫、お母さんは鶴子

で?あなたの生年月日は?」と諏訪は聞いた。

「昭和22年3月16日です」と寺田は言った。

「住所はどこでしたか?」と諏訪は聞いた。

「神戸市葺合区泉川町乙女塚…」
そして父が大東不動産に勤めていた事を寺田は答えた。

「両親の間にはあなたの他に
弟さん妹さんが四人おられましたね」と諏訪は聞いた。

「はい。います。ですがそれは‥新しい母の‥」

「新しいお母さん?」と諏訪は尋ねた。

「はい。僕の母は僕が小学校3年生の時に病気で死にました。」
寺田がそう答えると、

ソファーに座っている袴の男性は
何か言いたそうな表情を寺田の方に向ける。

「すると?あなたのお父さんとお母さんが
生活されたのは10年くらいですか?」と諏訪は尋ねる。

「あ、いえぇ5、6年です」と寺田は答えた。

「え?」と諏訪は聞き返した。

「僕は…母の連れ子です。母が父と結婚したのは
確か、僕が三つか四つの頃だと思います。」と寺田は答えた。

諏訪は「新しいお母さんとはうまくいきましたか?」
と尋ねた。

「新しい母も最初はかわいがってくれたのですが
父との間に次々と子供が生まれて、何だか気まずくなりまして
それで高校卒業と同時に家を出ました」と寺田は答えた。

「家を出た?」諏訪は聞き返した。

「はい。」と寺田は言った。

寺田がそう言うと袴の男性はイスに座ったまま

寺田の方を見た。

「その後どんな生活でした?」と諏訪は尋ねた。

「兵庫区湊川で友達とアパートを借りて
自動車の修理工をしていたのですが

11年前に父が死んで‥
それで関西を離れて東京に来ました。」と寺田は答えた。

「つまり、お父さんが亡くなられたので
東京に出られたと言う訳ですね」
諏訪は寺田の話を要約して聞き返した。

「はい 東京で2、3仕事が変わったのですが
6年前に現在のAGSに入社しました。」と寺田は答えた。

すると諏訪は急に

「失礼ですが寺田さん。
ちょっと裸になって頂けないですか?」と言いだした。

そして
「いえいえ、あの、ワイシャツをめくり上げて
背中を拝見するだけです。」と言った時

寺田はソファーに座っている袴の男性の方をチラと見た。

「もう質問する事は御座いませんので。」と諏訪は言い

最後に「念の為です」と言った。

「はい」

寺田は言われた通りブレザーを脱ぎ、
後ろを向いてワイシャツをまくり上げた。

寺田の背中には大きな火傷の跡があった。

和服を着た男性はソファに座ったまま
「ウウ・・」と表情をゆがめ小さな声を出した。

「結構です寺田さん どうも失礼いたしました」
と諏訪は言い、ソファーに座っている男性の方を向き

「井川さん、間違いなく寺田辰弥さんです」
諏訪がそう言うと、ソファに座っていた袴の男性が立ち上がり
寺田の方へゆっくり歩いてきた。

「寺田さん あちらが鶴子さん
つまりあなたのお母さんのお父さんの
井川丑松さんです。」諏訪が言った。

寺田は袴を着た男性の方を振り向いた。

「あなたの生れた村、岡山県阿哲郡三田村の
川上に戻っていただく為。

もちろんこれはあなたのご同意を得たうえでの事ですが‥」

諏訪は井川の方を向いた。
すると彼は急に命令口調で

「いやいやそうじゃないんだ。何としても
ご承諾いただいて戻っていただくために
迎えに来られた訳です」と言い

「私は席を外しますが、後はお二人で
お話合いになってみてください」
と言い

諏訪は井川にお辞儀をし席を外した。

井川は嬉しそうに寺田に近づいた後
表情をゆがめながら震え「た‥辰弥‥」と言い、

感極まったように、少しだけ声をあげ
泣きながらしゃがみ込んだ。

寺田はしゃがみ込んでいる井川の両腕を支え
ソファーに座らせた。

井川は座った後、急に苦しみだし
嘔吐しながらのたうち回り

ソファーのひじ掛けを持って体を起こしながら
皆の方を向き喀血して息絶えた。

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